アルゴスの遺跡
遺跡のい殆どは家々の下

 余計な心配はしなくてもいいのですが、気になるのです。このポリスはかなり勢力があり、キプロスへ移民していたというのです。キプロスではあまりそういう話は喜びませんでした。理由はワイン生産の先陣争いです。

 デルフィ、ミケーネにはディオニソスの神話があります。ミケーネは船出するとすればアルゴスの港でしょう。このあたりはブドウの名産地で、当然それはワインの名所でもあるのです。

 ワインを最初に作ったのはエジプトだとも聞きますがそれなら、直接エジプトから伝わったのかも知れません。しかし、そこに住み着いた人の多くが、アルゴスやネメアからやってきたとすれば、ディオニソスも一緒に運んできたと思うのが自然です。しかし、キプロスの人も意地を張ります。「ワインはキプロスで生まれた」と。

 こういう話は素人がいくら詮索しても、本当のことは分かりません。学者も地元の人も、推測で「そうだろう」の世界です。だから面白いのです。ジジ・ババが勝手に推測する余地があります。自分勝手に推測し、いかにも正しいように自説を話すのも、それは自由です。

 古代の人もワインを飲み始めるとやみつきになるのでしょう。ディオニソスはどこにでもついて回っています。日本の酒の神より出しゃばりです。長旅のつれづれにディオニソスはジジ・ババにとって格好の話題なのです。、、

 この劇場の観客席は殆どが山の斜面の岩、そのものです。運んできて置いたのは、右の写真の手前にある大きな有力者用の椅子だけです。緩いカーブを描くように山を切り取り、その斜面には、人が座れるようにやはりカーブに沿って、観客席を作るのですから大変な仕事です。ペロポネソスを走るとき、アルゴスは立ち寄り易いので、何度も行きましたが、劇場周辺の発掘調査はもう終わったようで、何年も変わりません。

 劇場前の広場が家に突き当たるところがゲートで、なにがしかの入場料を払います。そのゲートの前は道路で、それを渡ると金網が張られ、発掘現場があります。こちらの方も、4,5年経ってもさっぱり進んでいません。

 この遺跡で立っているのはこの石柱一本だけです。オリーブ畑が続き、一部に金網が張ってあるので、その中が遺跡だと分かりました。

 柵がなくなり、広い草原状の土地が広がります。どうやら放置された遺跡がオリーブ畑になっていたのを、調査で畑をやめさせたようです。もう調査は終わったのか、今後の課題として元のままにしてあるのかでしょう。

道などはもちろんありませんが、あちこちに盛り上がったところがあり、古代の建物の跡とおぼしき石があります。

 ずっと草原を歩いていったら、楕円形の競技場跡にでました。一面の草で建造物は何も見えませんでしたが、緩い馬蹄形の観客席跡がくっきりと残っていました。

 遺跡は捨てられたから遺跡なのですが、それを掘り出し、また捨てたようにも感じました。手が回らないのか、それとも今手を加えて掘り出すより、後世に残そうというのかも知れません。

 城を見ると登ってみたくなります。町の方から上る道はありませんでした。少しミケーネよりに戻り、橋の手前で左に折れ、川に沿って走ってみました。
 上の方に羊がいました。なんだか道が城まで続いているような感じでした。いけるだけ行ってみる、いつものやり口で、細い道をたどりました。運良く頂上まで道があり、城は番人もいませんでした。
 中は結構広く、広場があったり、神殿みたいな場所があったりでした。人は滅多に来ないようです。枯れ草と石垣の崩れた斜面に、大きな蛇がいました。展望は素晴らしく、アルゴス湾や街、さらに北方の丘陵地帯がそっくり見渡せます。
 どんな遺跡か、調べようと思いはするのですが、次に見たいところが出てきて「いずれ、いずれ」と言っているうちに、10年も経ち、その間、2度ほど遊びにいたのですが、調べずじまいです。でもいいところです。アルゴスへ行ったら、是非行ってみてください。車でOKです。

アルゴスの町の背後に山があります。木はほとんどなく岩と草の山です。遠くから見るとその天辺に城があります=写真下=。形からして中世の城のように見えます。
 城から見ると直線道路が見えます=右=。その突き当たりがナフプリオです。道路が見えなくなるあたりの左側にティリンスの遺跡があります。
 昔は城こそ構えても、近所の村、くらいの感覚でしょう。古代の人がスタスタ歩いたら、2時間はかからないでしょう。
 

 アルゴスはミケーネやネメア、コリントス、ティリンス、ナフプリオなどにも近く、クレタ、ミケーネの文明が滅びた後に出現したポリスの1つです。アルゴス湾の最奥に位置し、遠くキプロスへの移民なども、このポリスからでていった人々が多いということです。

 劇場は急な斜面ですし、岩ばかりなので残っていましたが、多くの遺跡は町の下です。道路の反対側にも遺跡はありますが、発掘中です。劇場の最上段から見下ろすと=写真下=、発掘されているのはほんの一部だということが分かりますが、今さら家々を立ち退かせて掘り返すとなると騒動でしょう。

 有り余るほどの遺跡があるギリシャだからこそ、目くじら立てて家並みをどかすようなことはしないのだと思います。まさに遺跡の上に居座りです。

 町外れの山の上には中世の城があります。ナフプリオの城もこの上から見えます。素晴らしい展望が楽しめました。なお、シキオンは地域的に少し離れていますが、写真の量も少ないし、独自のページには物足りないので、アルゴスに同居させてもらいました。

シキオン

アルゴスの劇場跡です。広場の先は町並みです。多くの遺跡がありそうです。


 劇場跡だけがキチンと発掘されていました。通路のトンネルは雰囲気がありました。夕方に行ったので、見ているうちに暗くなってしまいました。写真が暗いのはそのためです。

コリントスからパトラ方面へ10`ほど海沿いを走り、左(西)へ折れて3`ほどでシキオンです。知られた遺跡ではありませんが、スケールはかなり大きいです。競技場跡は放置されていて農家のトラクターが横断していました。

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