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別府から湯布院

湯量豊富として知られる別府温泉は、市内8つの代表的温泉の総称で、それぞれ趣が異なる。もともとは独立した温泉場だったが、大正時代には8つの温泉に「湯布院」「塚原」が加わり「別府十湯」と呼ばれていた。その後は町村合併などで湯布院、塚原が独自の温泉地となり、現在の「別府八湯(はっとう)」という名称が定着した。
一方、湯布院は、湯平村、塚原の3つの温泉を含めて湯量の多さは別府に次いで、日本で2番目といわれている。
また、九重町、九酔渓鳴子川に全長390mの歩行用吊橋が平成18年10月30日に開通。日本一の観光吊橋として、人気上昇中だ。

<コース>
別府市−(県道11号線)−湯布院−(国道210号線)−九重町−(県道40号線)−九酔渓−九重町
行程 約100km

●別府温泉
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日本一の湯量豊富な温泉として有名な温泉なことは周知の通り。どんな温泉町かと期待しながら別府湾に面した国道10号線を北から市内に入った。勝手に描いた温泉町のイメージとは異なり、車を走らせている限りどこにでもある普通の町だった。
そこで、別府駅前の観光案内所を訪ねたが一枚の市内地図と一ヶ所の温泉場を教えてくれただけだった。特別忙しそうでもなかったが、毎日同じ案内の繰り返しに音を上げていたのかも知れない。
ところが、あとで別府には8ヶ所の温泉場があることを知った。別府温泉、浜脇温泉、亀川温泉、鉄輪温泉、観海寺温泉、柴石温泉、明礬(みょうばん)温泉、堀田温泉と「別府八湯」と呼ばれ一見、普通の町にしか見えなかった市内全域に点在し、泉質も風景も異なっているのだ。そこですべての温泉場めぐりは出来なかったが、いくつかの温泉場を訪ねてみた。
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●別府市内全景を望む「展望台」へ
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最初に別府市内全体を知りたいと、別府市が一望できる高台へ車を走らせた。市の北、野田トンネル方面の途中に小さな文字で「展望台」と書かれた狭い道を上った。車が数台止められるスペースがあるだけだったが、そこからは、弧を描いて続く別府湾から1,375mの扇山の裾野に広がる別府の町が一望できた。市内の至る所から湯煙の上がるお馴染みの風景写真とは異なり、湯煙の立ち上るところは少なかったが、ここが温泉の町、別府であることを実感した。
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扇山と別府の町並み
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●鉄輪温泉
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おびただしい湯煙があちこちで上がる別府を象徴する景観を持ち、「別府温泉」と並んで人気がある。旅館、みやげもの屋がひしめき、八湯の中でも最も温泉場らしいところといわれている。とくに有名なのは、泉質などが異なったり激しく噴出する様子から“地獄の湯めぐり”と名付けられた温泉場めぐりだ。
コバルトブルーの池と噴気の「海地獄」、岩の間から絶え間なく噴き出す蒸気の「山地獄」、噴気で米を炊いたという「カマド地獄」などがある。さらに鉄輪温泉と並んで“地獄の湯めぐり”は、これより約5kmほど南にある鉄分を含み赤い色をした湯の「血の池地獄」、20〜30分間隔で150度の熱湯が10mも噴き上がる「龍巻地獄」や大地震で寺の床下から大爆発し、ボコボコと熱泥が噴き出す「坊主地獄」もある。
これらは観光の目玉だが、入浴するわけではない。ただ、塀とみやげ物店に囲まれた中、噴気や湯気の上がる池をみるだけ。一ヶ所400円だ。高いか安いかは人それぞれの受け止め方だが、自然の驚異や美しい風景はだれでも自由に楽しみたいものである。
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山裾に湯煙の鉄輪温泉
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龍巻地獄は間欠泉
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かまど地獄の入り口
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血の池地獄は鉄分の含有量の多い池
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●明礬(みょうばん)温泉
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別府の町の北、大分自動車道路沿いにある。江戸時代には「明礬」の採取地として量質とともに日本一を誇っていた。その採取事業とともに湯治場としても発展してきた。いまでも藁葺きの「湯の花小屋」がいくつもあり、白い噴煙が立ち上る。地表から噴出する温泉ガスから採取した結晶である、温泉成分の「湯の花」は昔は薬として飲用、塗布として利用されていた。いまは家庭用入浴剤として人気が高い。
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この湯の花の作業は、噴気を通した小屋床の上に藁や茅で屋根を葺き、内部は噴気が一定の強さでまんべんなく噴き出し、温度も保つことで結晶を作り出している。温泉の沈殿物などから採取するのではなく、湯の花小屋という特殊な製造施設をつくり、湯の花の結晶をつくる製造技術は、江戸時代から続いている。こうした全国でも類をみない湯の花採取方法は昨年、国の重要無形民俗文化財に指定された。
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観光客用の展望風呂もある
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湯の花採取場
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泉質は、単純酸性・硫黄泉で、効能は水虫、あせも、ただれなどの皮膚疾患の他、神経痛、リウマチ、関節炎、肩こり、腰痛などと書かれている。周辺には外湯をはじめ、それぞれの趣向を凝らした温泉宿がある。
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●阿蘇くじゅう国立公園
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別府から鶴見岳(標高1,375m)へ向かって走る県道11号線は、数百の源泉を持つという湯布院温泉を経て、“やまなみハイウェイ”と続く絶好のドライブウェイだ。大きなカーブを描いて標高を上げると、鶴見岳へのロープウェイの登り口へ出た。
鶴見岳は今から約千年もの昔、大爆発を起こした活火山で、別府温泉の源の山だ。10分ほどで山頂駅に到着。山頂からは、別府市街はもちろんのこと、国東半島や中国、四国まで見渡せる。
/料金 往復1,400円、問い合わせ TEL
0977-22-2278
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鶴見岳へのロープウェイ
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鶴見岳
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由布岳
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●狭霧台(さぎりだい)
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狭霧台からの湯布院
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湯布院へと下る県道11号線にある標高680mの展望台。湯布院盆地の全容が見渡せる絶好の景勝地だ。気温が下がる晩秋には、朝霧が盆地を包む幻想的な風景が広がることから、この名がついた。
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●湯布院(由布院)
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由布岳(標高1,583m)山麓の盆地にあり、かつては山間のひなびた温泉街だった。ところが地元の人々の努力の賜というべきか、高級観光地として様変わりした。美術館やアート館、ガラスなどの工芸館、パンやジャムといった工房と地元産とは縁の薄い館、さらに茶屋、レストランがひしめき合う。
JR久大本線由布院駅前は観光客があふれ、隣接する駐車場は満杯だ。駅から延びる大通りから由布岳の雄姿がのぞめなかったら、どこかの都会の一角と間違えそうだ。豊富な温泉は高級旅館やホテルなどに引かれ、共同の町湯も数ヶ所あるが、店と人の多さにゆっくり湯に浸かる雰囲気ではなかった。それでも湯布院というブランドに憧れて訪ねる人は多く、温泉街の開発は賛否両論、どこでもある話だ。
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湯布院駅は妙なデザイン
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日帰り温泉も探せばある
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民芸村は女性の人気スポット
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オシャレな和食料理店も
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駅前には「辻馬車」といわれる観光用馬車が待機。昭和50年(1975)から運行されている10人乗りの観光馬車だ。駅構内の観光案内所で乗車券を購入する。予約が必要の時もある。
/一人1,200円、所要時間約50分。
/観光案内所 TEL 0977-84-2446
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観光辻馬車は冬期休業があります。事前にご確認ください。
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辻馬車は人気
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●金隣湖
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湯布院を代表する観光スポット。温泉街のほぼ中心にある周囲200mほどの湖。明治17年儒者「毛利空桑」が鮒の鱗が金色に輝く様を見て名付けたという。元は大きな湖だったが、度重なる地震による山崩れで埋没し、いまの大きさになった。
温泉が湧き出ている上に、数本の小川が流込んでいるため水温は一年中同じだそうだ。気温の低い時は湖面から湯気が立ち上り幻想的な雰囲気をかもし出す。湖を囲む木立が色づく秋、あたりを緑に染める新緑は心を和ます。水深は浅く、鯉、鮒などの魚類が棲息している。
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●九重“夢”大吊橋
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国道290号線九重町から、阿蘇方面へと向かう県道40号線を約20km地点にある景勝地九酔渓に、大吊橋がかけられた。平成18年(2006)10月30日に完成した長さ390m、高さ173mの日本一の人道の橋だ。1,000m級の山々が連なるくじゅう連山にある九酔渓には大小さまざまな滝がある。中でも日本の滝百選に選ばれた落差83mの震動の滝をはじめ、約170mという高さから渓谷美を満喫できる観光吊橋は、一躍脚光をあびた。
片道約400mを往復する人々の列は2時間待ちは当たり前という混雑ぶり。1日10万人という日もあったと関係者の話。橋の両側には大駐車場があり、大型観光バスや乗用車ですでに満車、順番を待つ車の長い列も続いていた。
幸いというべきか、冬季には午後4時に閉鎖という午後3時に着いたため、30分ほどの待ち時間だった。
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九重“夢”大吊橋から見る震動の滝
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九重“夢”大吊橋は観光客で一杯
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ゆさゆさと船のように揺れる橋、途中で船酔いのように気分が悪くなる人もいて、倒れたお年寄りもいた。片道だけという人にはシャトルバスが運行されている。ハイヒールなどかかとの細い靴は禁止という足下は、金網状になっていて深い谷底が見える。
/料金 500円、問い合わせ 九重“夢”大吊橋管理センター TEL 0973-73-3800
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