初夏の北海道 富良野・美瑛・旭山動物園(1)

千歳空港から三笠市、桂沢湖経由で富良野へ。上富良野・美瑛と続く国道237号線を北上、旭川までの約250kmは、北海道でも人気ドライブコースの一つだ。故前田真三が好んで撮影した富良野・美瑛のお花畑、移り変わる季節の田畑や自然の豊かな色彩に代表される憧れの風景の中を走る。
加えて倉本聰脚本のドラマ『北の国から』や『風のガーデン』のイメージや建物がそのまま残る舞台を巡る。富良野自慢のラベンダーの花は開花にはまだ少し早かったが、ファーム富田をはじめ多くの観光花園では、ルピナス、ポピー、ハマナスなど鮮やかな色彩で大地を染める。
国道を離れ、富良野岳山麓の吹上温泉露天風呂に浸かり、美瑛の丘陵に続く麦やじゃがいも畑を眺めながら旭川へ。ここで、ユニークな飼育環境で人気を呼んだ「旭山動物園」を訪ねた。

<コース>
千歳空港−(道央自動車道)−三笠IC−(国道452号線)−桂沢湖−富良野−(国道237号線)−上富良野−(道道291号線)−十勝岳温泉−吹上温泉−(道道353号線)−上富良野−(国道237号線・道道37号線)−旭川・旭山動物園
全行程 約300km
●三笠市立博物館
「一億年の時間旅行」と題したアンモナイト化石や恐竜の骨などが展示された博物館。別名「化石博物館」ともいわれている。館内には三笠市に分布していた白亜紀の地層から発見された爬虫類や生物の骨格片などが展示されている。とくに多いのは、約7,000万〜1億年前の巨大なものから小さなものまであるアンモナイトの化石だ。ちなみに一番大きいものは直径130cm、約580kgもある。
アンモナイトは頭足類と呼ばれるイカやタコの仲間で、世界中の中生代の海で繁栄したもの。世界中に多くその化石を残す。また昭和51年(1976)に幾春川でエゾミカサリュウ頭部の化石が発見され、鋭い歯から肉食爬虫類とされ、国の天然記念物に指定されている。
/入館料 370円、TEL 01267-6-7545
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 三笠の博物館はアンモナイトが圧巻
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 日本最大級のアンモナイト
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●桂沢湖
石狩川水系幾春川別川に建設されたダム湖。周囲62km、原生林に囲まれた景観の美しいところだ。桂沢ダムは昭和32年(1957)に完成した、北海道で初めて建設された多目的ダムである。人工湖のほとりに立つ恐竜像は、白亜紀を代表する最強の暴君ともいわれたティラノサウルスだ。昭和56年(1981)、三笠市開基100年記念に制作されたもの。
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 桂沢湖の湖底となったところで 恐竜の化石が発掘された
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 桂沢湖と恐竜の模型
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●三段滝
桂沢湖から約20km、間もなく富良野へと向かう道道135号線の手前にある滝で、とくに紅葉時には有名な見どころだ。
芦別岳を源とする芦別川にかかり、砂岩の岩盤を三段状に這うように流れるが、初夏は雪解けの水を集めて豪快に流れ落ちる。トイレや売店もあるので、ドライブ休息には最適の場所でもある。
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 芦別川の名所、三段の滝
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 富芦トンネル。北海道の真ん中を抜ける
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 100年前の炭鉱労働者の家。一間しかない
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●『風のガーデン』ロケ地
平成9年(1997)に開通した2,728mの長いトンネル(富芦)を抜けると、もう富良野だ。最初に出会う「ラベンダーの森・ハイランドふらの」は、まだ開園していなかったが、ラベンダーの開花時期(7月初旬〜8月)には、十勝連山を仰ぐ大地は見事な紫色に染まるだろうと思いつつ、ロケ地を訪れた。
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 風のガーデン
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 風のガーデンの中心となった小屋
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新富良野プリンスホテルの敷地内に、2008年10月から放映された『風のガーデン』のロケ地がある。2年間をかけて英国式ガーデンを造り、1年がかりで撮影された倉本聰のドラマ。あらすじは、麻酔医である主人公は、自らの不倫が原因で、妻が自殺、父親に勘当されたが、7年後に自分が末期ガンと知り二人の子供たちと父親のいる家族のもとへ戻っていく。末期医療と家族の絆を描いたドラマだ。
昨年(2009年)4月からこの場所が一般公開されたという。駐車場からは専用バスで、約5分。徒歩では入れない。
駐車場近くの森の中にはログハウスが数軒建つ。ニングルテラスと名付けられたカフェ・レストランとみやげ物屋だ。
/送迎バス代 500円、TEL 新富良野プリンスホテル内 0167-22-1111
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●富良野チーズ工房
富良野西岳の麓、白樺の林に囲まれた自然豊かな中にある。ガラス越しにチーズの製造室や熟成庫などが見学できる。その他、別の建物ではアイスミルク(ジェラート)工房やピッツァ工房もあり、それぞれが地元の材料を使ったオリジナル製品をつくっている。
カボチャやブドウなどのエキスが入ったアイスは、さっぱり味で美味しい。自作のモッツァレアチーズをふんだんに使い、薪の釜で焼いたピッツァも旨い。他にバター、チーズ、アイスなどの手作り体験もできる。
チーズ工房の2階には、これらの試食コーナーとともに直販店もある。
/見学自由、TEL 0167-23-1156
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 チーズ公園
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 白樺林の中にチーズ工房
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●ワイン工場
ぶどうヶ丘の斜面に並んだ赤い屋根、ワイン工場の建物はすべてレンガ造りだ。製造工程、熟成庫の見学と、ワイン試飲もできる。眼下には富良野盆地、正面には十勝連峰の山並が眺望できる2階の試飲室では、結構ワインを豪快にふるまってくれるので、ドライバーは絶対に口にしないこと。
広い敷地一面にラベンダーが植えられ7月には一斉に開花する。この時期に合わせて工場とラベンダーに向けてライトアップされる。
/問い合わせ TEL 0167-22-3242
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 ワイン工場。見学者の入り口
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 ワインハウスでは食事もできる
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 ワイン工場のオブジェ
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 熟成中のワイン
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 ワイン工場前から見る中富良野
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 試飲はバスの団体客に大人気
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●ファーム富田
明るい紫色の花、ラベンダーといえば富良野を連想するほど、ラベンダーは富良野にあり、その発祥地ともいえるところが、ファーム富田なのである。ファームの中にこんなラベンダーの歴史が書いてあった。
「50年間ファーム富田の歴史と共にラベンダーを育てつづけてきた畑です。化粧品香料としての栽培がたちゆかなくなった1975年、家族の悲痛な思いで潰す決心をしてトラクターを畑に乗り入れたが、ラベンダーが愛ほしくてどうしてもつぶすことはできなかった。苦しくても、もう一年。その年に癒しの植物として、みて楽しむ花としての運命の扉を開く奇跡が起きたのです」と。
いまでは、夏には富良野の大地を紫色に染めるなくてはならない花、ラベンダーに、こんな物語があったことを知った。
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 花畑で知られる富田ファーム
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 開花時期に合わせて花は育てられている
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 ラベンダー公園。まだ早く、 緑の部分がラベンダー
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 花の香りを詰める
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ラベンダーのつぼみも膨らみかけてきたとはいえ、開花まではあと10日ほどかかるとファームの人の話だった。だが、広いファームには6月中旬から咲き始めたというオリエンタルポピー、姫キンギョソウ、ルピナス、ハマナス、フランスギク、サルビアなど色とりどりの花が楽しめる。ラベンダーを含めた夏の花の盛りは7月上旬から。
/入園無料 10月〜5月までは休園、TEL 0167-39-3939
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 色とりどりの花が見事
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 ラベンダー・ソフトクリーム
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 ちょっとお洒落な椅子の上の花
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 花のベンチ
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ファーム富田をはじめ、旭川へと北上する国道237号線沿いには、大小さまざまな花のファームがあり、それぞれが美しい花を咲かせている。
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 8月まで花は絶えない
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 美しい花模様
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●北海道のヘソ
富良野は北緯43度20分、東経142度23分に位置し、北海道の中心である。明治42年(1909)に北海道の中心として測量された。その中心標は小学校の校庭に置かれ、富良野市の重要文化財となっている。
この中心標は人間に例えればヘソにあたるところから昭和44年(1969)に「北海ヘソ音頭」とヘソ踊りが地元で創作された。毎年7月28・29日に腹に思い思いの顔を描いて踊る祭りが繰り広げられる。中心地すずらん街の脇にはヘソ神社があり、社の隣りには穴の開いた大きな石が祀られている。石の穴に親子、夫婦、恋人が手を通して握り合えば、絆が深まるという。商店の裏にあり見付け難い神社であるため、地元の人に尋ねること。
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 富良野駅。観光案内所などがある
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 北海道中心標は小学校の校庭にある
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 富良野の中心部で毎年7月に へそ踊りが練り歩く
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 北海道の中心。へそが売り
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 駅前の通称「へそ神社」には 穴の中で手をつなぐ絆石がある
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 へそ踊りの像
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●ドラマ『北の国から』ロケ地を訪ねる
昭和56年(1981)からフジテレビ系列で放送された連続ドラマ(全24話)。脚本は倉本聰。舞台は北海道・富良野。黒板家をめぐる親子愛や登場人物が、大自然の中で成長していく姿を、叙情豊かに描いた作品だ。
半年の連続ドラマが終了後も再開を望む声に応えて数年に一度、スペシャル版としてのドラマが放映され、いずれも高視聴率を記録、2002年「遺言」が終わるまで、なんと21年間も続いた国民的ドラマであった。
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 ロケ地の標示
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 富良野駅近くの農協倉庫跡は北の国からの資料館
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主人公は妻の浮気をきっかけに離婚、幼い息子と娘を連れて故郷である富良野へ帰るところからはじまる。倉本聰が訴えるドラマのメッセージは、自然の中で生き、本当の豊かさを発見すること。
それは「文明の発達は人間がエネルギーを消費しない結果を招く。たとえば、リモコンは歩くエネルギーを必要としない。体内に蓄積された余剰エネルギーを、お金を払ってジムに通って消費する。それには、なんの生産性もない。ドラマでは何かを生産するための身体を動かし、労働の苦しみと、その中から生まれる喜びや悲しみを表現している。また美しい自然は時によっては脅威にもなる」そんな中で生きていく人々から、本当の豊かさはなにかと伝えようとしているドラマであった。
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 ドラマにも登場したそば屋さん
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 この家もドラマの舞台になった
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半年間のドラマのために、1年以上の北海道ロケを行い、大作映画並の時間と予算をかけた。主人公をはじめ、登場人物の家も富良野麓郷地区にイメージ通りに作り、放映後にこれらを一般公開した。いま、このドラマの舞台はラベンダーと並んで富良野の代表的な観光地である。
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 廃材で造られた家
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 拾って来た家
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