箱根の山々と富士山


まだ春浅い3月下旬、快晴に恵まれた日曜日、ビルの谷間に白く輝く富士山の嶺をみて“箱根へ行こう”
と思い立った。
山頂から、街中から、車窓から富士山が見えると「あっ、富士山だ!」と誰もが特別なものを発見した
かのように心が躍るものである。現在は高層ビルや大気汚染などで富士山の見える範囲は狭くなったが、
約半径
200kmもの範囲からはっきりと見られるという。当然、山や谷などで遮られるところもあるが…。
こうしてあらゆる角度や距離から眺められる富士山だが、富士の雄姿を見るには、やはり箱根からだろう
と、東名高速道路を御殿場へと向けて車を走らせた。折しも、間もなく週末は高速道路料金も一律
1,000円(大都市圏と一部車種を除く)となる。今年もドライブの季節がやってきた!



コース>
首都圏−(東名高速道路)−御殿場IC−(国道138号線)−乙女峠−湖尻−駒ヶ岳−箱根町−十国峠−三島−
(国道1号線)−芦ノ湖スカイライン−箱根スカイライン−長尾峠−御殿場
行程約350km


●東名高速道路からの富士山
穏やかな風、抜けるような青い空に恵まれた日曜日の高速道路は行楽地へ向かう車で、込み合っていた。厚木
を過ぎるころから見え隠れしていた富士山は、大井松田付近から次第に大きくなり、純白の頂が青空にくっき
りと浮かんできた。

やがて足柄SAへの道を大きくカーブしたその先に、まさに秀麗なる富士の全容が姿を現した。流れる車はどれ
も速度は落とさないが、皆、フロントガラスいっぱいに広がる富士の雄姿に感嘆の声を上げながら、走っている
に違いないと思った。

   
東名高速大井松田付近
          東名高速足柄付近

足柄SAからは、目の前に構えるように聳える富士の姿があった。しかし、残念ながら、ずらりと並んで駐車し
たトラックと、幾本もの電線、さらに樹木に妨げられ、カメラを向ける気持ちも失せた。

●箱根山

神奈川県足柄下郡箱根町を中心に、静岡県にまたがる火山の総称で、富士箱根伊豆国立公園に指定されている
。中央の火口丘と二重の外輪山で構成され、カルデラ湖である芦ノ湖がある。大涌谷などでは、現在も火山活
動が見られ、山腹や山麓には多くの場所で温泉が湧出している。

湯本、強羅、大平台、宮ノ下、早雲山、塔ノ沢など全国に知られた温泉地は、他を含めて箱根十七湯といわれ、古来より湯治場として栄えたが、明治以後高級リゾート地として開発が進み、景勝地として観光開
発も活発に行われてきた。

●乙女峠の富士山



御殿場ICを出て、国道138号線をコーナーの連続する坂を辿ると乙女峠。駐車場、売店及びトイレなどの設備があり、眼下の御殿場から目で追うと富士山の大きさに圧倒される。
箱根外輪山にある富士見三大峠ともいわれている標高1,105mの乙女峠の旧道は、これより約徒歩30分のと
ころにあり、ハイキングコースにもなっている



「団子より富士山」です
その昔、仙石原に住む娘が父親の病気を治そうと、峠の地蔵堂に願掛けを行った。満願の日、父親の病は
治ったが、娘は雪に埋もれて死んでしまった。娘の霊を哀れみ、誰言うともなく乙女峠と呼ぶようになっ
たという。

昭和39年(1964)トンネルが開通し、多くの人はこのドライブインから壮大な富士山を愛でる。車から降
りた人々は、一斉に富士山に向けて携帯電話をかざす。バスが駐まると、あたり一帯にガシャ・ガシャとい
うシャッターの音が響く。


●仙石原
標高1,213mの金時山(足柄山)を中心とする古い外輪山と中央火口丘小塚山(853m)、台ヶ岳(1,054m)
の山麓の間に広がる火口原。標高650〜700mのところにある。

源頼朝がこの雄大な原野を見て「ここを開墾すれば一千石の米が採れるだろう」と言ったのが、この地名の
起こりだと紹介文にあった。

晩秋はススキの名所として有名で、芦ノ湖から流れ下る早川沿いの一部には、湿原が残り「仙石原湿原植物
群落」として国の天然記念物に指定されている。


●箱根駒ヶ岳

     
駒ヶ岳へのロープウェイ。101人乗りです
    駒ヶ岳からの展望


富士山と芦ノ湖展望(駒ヶ岳)

箱根園から標高差約600mの山頂付近まで空中ケーブルで7分間で上ることができる。さらに、徒歩10分で
標高1,356mの箱根神社元宮のある山頂まで簡単に登れる。

眼下に芦ノ湖、目の前には雄大な富士山があり、その展望はまさに絶景。周囲は360度の大パノラマで、
箱根の山々はいうに及ばず、駿河湾から南アルプスまで見渡せる。

駒ヶ岳からの富士山


駒ヶ岳からの富士山


●大涌谷
   
駐車場からの大涌谷

芦ノ湖と並ぶ箱根を代表するビューポイントだ。山肌のいたるところに噴気が上がる。約3000年前の水蒸気
爆発によってできたもの。かつては「地獄谷」といわれていたが、明治天皇・皇后の行幸啓に際して呼び名
大涌谷と改めた。
噴煙地の下には延命地蔵尊が祀られている。千百余年前弘法大師が、噴気烈しく熱泥たぎるこの一帯を、さ
ながら地獄の様相と心を痛めた。そしてこの地に地蔵菩薩を刻み、地獄にあえぐ人々の救済を祈願したという。
いまなお噴煙地には硫化水素が噴出している。登り口に注意事項が書かれているので一読しよう。

   

●黒玉子茶屋



地蔵尊より噴煙を目指して約15分歩いたところにある、地熱と温泉で茹でた卵が名物の店。今は大きな金属の箱
に温泉を流し込み、約1時間ほどで黒くなった卵ができ上がる。真っ黒な殻を割ると真っ白な本来のゆで卵が現れ
、硫黄の香りほのかな味がする。

この黒玉子とは、硫黄と鉄分が卵の殻に結びついて黒く変色するのだそうだ。1個食べると7年、2個食べると14年
寿命が延びると言われ、延命長寿の黒玉子だ。観光客の多くが、その場で熱い殻を剥いて食べている。空高くのぼ
る噴気が風に揺らぐ間からみる富士は、ひときわ大きく見えた。

    
名物・黒玉子は右の四角い釜で約1時間茹でる

●箱根スカイラインと芦ノ湖スカイライン


 湖畔の山腹を横切る。絶景の道路。
御殿場方面から長尾峠に上り、芦ノ湖北西の湖尻峠までの約5kmが箱根スカイライン。湖尻峠から箱根峠
国道1号線までの芦ノ湖北岸に連なる全長約11kmが
芦ノ湖スカイラインとなる。杓子峠、三国峠、芦ノ湖展望
所などに車を駐められる展望所がある。

箱根の外輪山を縫い、富士山や芦ノ湖の全景を眺めながらドライブを楽しめる。ドライバーにとっては、一本の
道の異なる名称に意味はないが、それぞれ運営会社が違う。したがって料金所が2ヶ所あり、通行料も異なる。


    
長尾l峠へ                芦ノ湖展望台へ

       
芦ノ湖展望台                      芦ノ湖と富士山

       
杓子峠                         三国峠


のどかな日。快晴の富士を眺め、」湖畔で弁当を広げ、ボート遊びをする人も…。釣り人の姿もあった。

     
      十国峠へ          十国峠             綿田一里塚(三島市)
 富士山三昧でした。東海道を歩いた時代は、」晴れていれば快適な”山旅”でもあったでしょうが、荒れた日は厳しい旅になったでしょう。」そんなことを思いながら、のんびりと箱根を味わった一日でした。