夏の南九州(1)



今年の梅雨明けは、関東地方で例年より1週間以上も早かったという。九州も7月20日を待たず夏本番に突入。
青い海、緑の山、咲き乱れる夏の花々、活火山と温泉、シーガイアに代表される数々のレジャー施設など、楽しめるところがたくさんある。島津の殿様や薩摩藩など近代日本の歴史を動かした九州男児の心意気を伝える遺産も多い。
今回はこれらを訪ねて南九州宮崎、鹿児島地方を1週間でドライブした。
みどころ、遊びどころをまじえ南九州の夏を3回に分けて紹介したいと思う。

 

 

 

 

 


<コース>
宮崎空港−日南海岸(国道220号線)−南郷町−都井岬−垂水−(フェリー)−鹿児島全コース約800km、6泊7日


 

 





●宮崎空港から日南海岸へ

東京−宮崎間のフライトは約1時間30分。
宮崎空港へ到着すると、あらかじめ予約しておいたニッポンレンタカー宮崎空港営業所のピップアップカーが迎えてくれる。
従業員たちは、次々と到着する飛行機がつれてくる観光客の応対に大忙しの様子。笑顔で「いってらっしゃい」の言葉に送られて、いざ出発。
空港から国道220号線はすぐ。この国道を南下すること10kmほどで青島に着く。
公共駐車場はないので、私営を利用する。(青島まで徒歩約10分)

●青島


青島は、海岸線から
200mほど離れた周囲約1.5kmの小さな島で、“鬼の洗濯岩”と呼ばれるまるで人工的に作ったと思われるような波状岩で囲まれている。
自然の作り出したその不思議な岩棚を見るだけでもおもしろいが、この小さな島に生息する特異な植物も興味深い。ピロウやハマカズラといった熱帯・亜熱帯植物をはじめとする自生植物が約200種もあり、国の特別天然記念物にも指定されている。緑の島は南国・宮崎の象徴ともいえる。

○青島神社


島の中央には、青島神社がある。この島に亜熱帯植物に囲まれた朱塗りの社は少し意外な感じもするが、ここは「海幸彦・山幸彦」伝説の伝わるところ。神社の祭神は山幸彦(彦火火出見尊:ひこほでみのみこと)と妻豊玉姫。

境内には「海幸彦・山幸彦」の物語や神武天皇の大和平定など、日向神話の世界をロウ人形で再現した
「日向神話館」もある。
また、宮崎といえば、巨人軍のシーズン前のキャンプ場だ。境内入口には監督長島茂雄氏のロウ人形も展示され、巨人軍メンバーの絵馬も飾られている。
/日向神話館入館料600円、TEL-0985-65-1262

○青島熱帯植物園

青島へ渡る橋の手前にある青島熱帯植物園では、5ヘクタールの広い園内にフェニックスやピロウ、ハイビスカスといったポピュラーな熱帯植物が観られる。
また、大温室にはバナナ、マンゴーなどの果実がたくさん。大王ヤシや食虫植物など珍しい種類も多い。
/園内無料、大温室200円、TEL-0985-65-1042

○こどものくに

青島の近くには「こどものくに」がある。広い敷地は海に面し、川や丘など自然の地形をうまく利用して作られている。園内はゆっくりと楽しめるほか絶叫マシンまである。植物園は家族で楽しめる。
/入園料600円、TEL-0985-65-1111

●堀切峠



青島からさらに国道
220号線を南下。間もなく道は大きくカーブを描き、その向こうに突然日向灘の広がる場所に出る。ここは風光明媚な
「堀切峠」
フェニックスの植えられた国道下には岩礁に砕かれ白波が飛び散る青い海。
展望台があり、駐車スペースもある。

●フェニックスロード


ここから都井岬へと続く
日南フェニックスロードは快適なドライブウェイ。途中いくつかの観光スポットもある。

(注意)現在、都井岬の手前約20kmの幸島付近からの国道448号線は2月にあった土砂崩れのため全面通行止め。復旧のめどは7月中旬予定だが不確か。地元で要確認。

●サボテンハーブ園



堀切峠からサボテン公園までの約
15kmは、“鬼の洗濯岩”が続く海辺の道を眺めながらのスローダウンドライブだ。やがて右手に、丘全体がサボテンという林が見えてくる。ここは、シーズンなら広い駐車場に観光バスがずらりと並ぶほど人気のあるところ。
園内には約130万本ものサボテンが植えられ、初夏には一斉に黄色やピンクの花をつける。さらにこれからのシーズンは、ハイビスカスやハーブなど園内に植えられた多種多様の植物が花開く。



展望台へと続く急斜面には動く歩道やスロープカーがあり、子供からお年寄りまで楽に上ることができる。展望台からはサボテン林と日向灘の広く青い海を望め、海風も心地よい。

帰路はサボテンの群生する中をのんびりと下り、途中、約60種3000株のハーブや熱帯植物を観ながら、食虫植物温室、ブーゲンビリアの温室を巡るのもよい。
また、レストランにはサボテンやハーブを使った珍料理もあり、お土産ショップでは、サボテンのアイスクリームや菓子、ハーブのポプリ、香水、ドライフラワーなどを購入できる。
入園券の中には園内で使える金券も含まれていて、スロープカー(片道200円)やサボテンアイスクリーム(250円)などにも使える。
/入園料600円、TEL-0987-29-1111

●鵜戸神宮

サボテン公園から国道を左折すること約8kmで、鵜戸神宮参道入り口の駐車場に着く。新参道のほうは、トンネルを抜けて徒歩15分ほどで大鳥居に出、さらに100段ほどの階段を下る。旧参道は、海岸から階段を約300段上り、約500段下るという、合わせて800段ほどの階段。
一般に神社仏閣といえば高台にあるものだが、荒波が岩を洗う鵜戸崎の突端にあるこの神社は、階段を下るという珍しい造りになっている。
地元の漁師の話では、40年くらい前までは毎日子供たちがこの階段を掃除していたという。



いま旧参道は苔むした石段に雑草が伸び放題。上り下りに
30分以上かかるこの参道を通る人は地元の人でもほとんどいないとか。だが、祭神が神武天皇の父・鵜葺草葺不合尊(うがやふきあえずのみこと)という格式高い神社への参拝には、本来の参道を通るのが礼儀とばかり旧参道を行くことにした。階段を上りきったところには、古い寺の住職の墓石がいくつもあるがそれは神仏一緒だったころの名残とか。現在、寺はない。



本殿は天然の大洞窟の中にあり、目前の大岩に波が立つ。洞窟の中では清水がしたたり落ち、祭神がこの水を飲んで育ったという「お乳岩」がある。

また、本殿前の大岩の窪みは、男は左手、女は右手で玉を投げてうまく窪みに入ったら願いが叶うという。
玉は小さな素焼きのもので、5個100円。

●南郷(なんごう)



南郷は日南市より約
8km南、南郷川の河口に発展した町である。町の規模は小さいが、河口に面した場所には立派なリゾートホテルもあり、広い部屋の全室からは海が見渡せ、潮の満ち引きで様子を変える河口風景が楽しめる。あいにくの曇り空だったが、潮が複雑に変わるなかで若者たちがサーフィンに興じているのが見えた。

○マリンピューワーなんごう


町のはずれには
15〜25mの透明度を誇る
日南海中公園がある。
入江には小さな島が点在し、浜から泳いで渡れる島や小舟で磯遊びに行ける島もある。こうした島の周りには小さいながらも珊瑚礁があり、集まる魚を観賞するダイバーや磯釣りをする人々も多い。
また、客室部分が海中に沈む半潜水式の水中観光船もあり、約1時間の遊覧は島々の風景や熱帯魚、テーブル珊瑚などを楽しませてくれる。
緑深い無人島にはトンビが棲息していて、観光船の乗客が蒔くエサを目当てに大空を旋回する。船の周りにはカモメというのが一般的イメージだが、ここでは黒いトンビなのだ。
/料金2,000円、TEL-0987-64-0688

●都井岬

南郷から国道448号線海岸道路を南下すると、道路は土砂崩れのため全面通行止め。迂回路の看板は小さい上に地元の人にしかわからないような地名表示。そのため、いったん南郷へ戻り国道220号線串間市から都井岬へと向かった。残念なことに約100匹の野生猿が生息しているという幸島へは寄ることができなかった。



国道から分かれる岬への有料道路は
400円。「料金は道路のためだけではなく野生馬保護のため」とわざわざ係員が説明してくれた。というのも、ここは“御崎馬”と呼ばれる野生馬の生息地。10年前までは300頭ほどいたという野生馬も現在では165頭。馬が緑と青い空の中でのんびりと草をはむ光景は、実にのどかでほほえましく、心和ませる。
岬を一周しながらじっくり馬を観察していると、それぞれ群によって違いがあることがわかり、興味深い。草原にいる群は毛並みもよく太っているのに比べ、森林の中にいる群は痩せて、なんとなく力がないように見えた。これは力関係によるものか、など勝手な想像をするのも野生動物を観察する楽しみのひとつだろう。ただし、相手はおとなしそうに見えても野生生物。無防備に近づくと危険である。

都井岬ビジターセンター
都井岬の自然や御崎馬の生態を知りたい人はぜひ訪れるとよい。野生馬の生態を視覚体験できる。
/入館料500円、TEL-0987-76-1546

都井岬灯台
岬の東端、海抜225mの断崖の上に立つ白亜の灯台は昭和4年建造で現在も現役。駐車場からは徒歩約10分。灯台からは日向灘を望める。
/入場料150円、TEL-0987-76-1009

●垂水からフェリーで鹿児島へ



都井岬から串間市へ戻り、日南海岸国定公園の志布志湾沿いを走
る。青い海と松原を眺めながら国道
220号線を鹿屋市経由で
垂水へと向かった。
桜島を海上から眺めたいと、垂水からフェリーで鹿児島へ。桜島を間近にしながらの40分の船旅の後、夕暮れ迫る
鹿児島市に到着した。