夏の南九州(3



鹿児島から桜島をまわり霧島・えびの高原へは南九州でも大きな観光ルートでありドライブコースとしても魅力的なところである。

鹿児島のシンボル・桜島は中央には御岳(1,117m)、現在も火山活動を続ける南岳(1,040m)をはじめ中岳、北岳が南北に並びその裾野には溶岩原が広がっている。
この活火山について記録されている最古の噴火は和銅元年(708)で、以来、大小何度もの噴火を繰り返してきた。とくに大正3年の大爆発は大規模なもので、流出した溶岩が瀬戸海峡を埋め尽くし、大隅半島と陸続きとなった。西側の村落も大きな被害を受け、その痕跡をいまに多く残す。
現在なお噴煙をあげる活火山である桜島、自然の驚異と神秘そして美しさのすべてをみせてくれる島である。
一方、霧島もまた火山帯の上に位置し、温泉の多いところ。ゴツゴツとした溶岩の桜島とは異なり、なだらかな山や高原地帯が広がる。春は花、夏は緑、また秋には紅葉、冬には温泉で雪見酒とシーズンを通しての行楽地だ。




<コース>

鹿児島−(フェリー)−桜島−国分市−霧島温泉−えびの高原−小林市−シーガイア−宮崎空港

全コース 約800km67



 



桜島

フェリーからの桜島鹿児島港から桜島へはフェリーがピストン輸送している。約15分の航行だが、デッキから望む桜島は最高だ。晴れた日には南岳からの噴煙を眺めることができる。
毎日仕事で往復するという年配の人は「自然の風景は一日として同じ日はない。いつだって美しい」と言い、誇らしそうに桜島を眺めていた。

フェリーが着くと手際よく車も人も降ろし、再び車と人を乗せて鹿児島へと去っていった。

桜島ビジターセンター

ビジターセンターフェリー発着地からすぐにビジターセンターがある。桜島のすべてがわかるので、この島を回る前にぜひ訪れてみたい。
音響効果を使ってリアルな表現をした噴火シーンの再現や火山活動のメカニズムから溶岩のことや島の生活などが写し出されたハイビジョンシアターなどがある。

烏島の観光道路ここより「なぎさ遊歩道」をたどると溶岩展望台がある。
駐車場からわずかに登った展望台からは山を背に鹿児島市を望む。足元にうねうねところがる溶岩は大正3年の噴火で烏島と言われた一つの島が20mも下に埋まったところ。

国道224号線を垂水方面へ、錦江湾を眺める小さな入り江の溶岩地帯に湧く「古里温泉」に出る。名物は龍神露天風呂だ。
岩場にそびえる大樹アコウの木に龍神が宿っているという言い伝えがあり、この名がついた。珍しいのは神様が住むという風呂なので、白衣を身につけて入浴することだ。(入浴料 1,050円)
/古里観光ホテル TEL 0992-21-3111

周辺には与謝野晶子、細川幽斎などの文学碑が立っている。なかでも碑と共に像もある林芙美子は、母の実家であるこの温泉旅館でしばらく暮らしていた。

埋没鳥居

噴火で埋まった鳥居国道から分かれて桜島の県道へ入ると間もなく民家と石垣の間にある鳥居の上部だけが見えるところがある。
もとは高さ3メートルもあった黒神神社の鳥居が大正3年の大噴火で埋まり上部の笠木だけを残す。神社はもちろん、このあたりの民家は火山灰に埋もれたり倒壊した。
鳥居の近くには民家の門柱がわずかに地表に頭をのぞかせているところもあったが、夏草に隠れていて見つけ難い。当時の状況などが書かれた表示版がいくつか立っているので、自然の驚異が実感できる。

霧島へ

国分市まで錦江湾を半周するように国道220号線が続く。噴煙を上げる南岳の裾野を眺めながら湾に沿って走る。漁をする小舟が浮かぶ昼下がりの夏の日はまぶしい。
国分市へ入ると間もなく霧島方面の標識に従って県道60号線へ。新川渓谷温泉へは国道223号線をまっすぐ上る。

霧島神社の大鳥居緑濃い山道を上ると国道223号線とぶつかる。信号を左折するとすぐに霧島神宮の大鳥居に出会う。6世紀初頭に社殿が建てられた。
祭神は天孫降臨神話の時代というからかなり古い。
以来、霧島の噴火によって焼失と再建を繰り返したが、現在の社殿は正徳5年(1715)、21代薩摩藩・島津吉貴によって寄進されたもの。
鳥居の脇にある観光案内所では、霧島屋久国立公園のパンフレットや地図を無料で配布してくれるほか、名所や道案内もしてくれる。

丸尾滝、通称「湯の滝」低くたれ込めた雲は標高を上げるに従って視界を奪いはじめていた。
霧島温泉郷の国道沿い、道が突然大きなカーブにさしかかったところに、硫黄の臭いをプンとさせた滝がある。滝の上にある林田温泉や硫黄谷温泉の湯を集めて落ちる珍しい湯の滝だ。
滝壺は乳白色の温泉の色。夜には水銀灯でライトアップされるそうだ。

硫黄谷温泉は江戸時代に発掘されて以来、湯治場として斉藤茂吉、与謝野晶子など多くの文化人も訪れた有名な温泉だ。現在は宿は霧島ホテルのみだが、庭園浴場をはじめ露天風呂やさまざまな種類のお風呂を宿泊しなくても楽しめる。(入浴料 1,000円)
/霧島ホテル TEL 0995-78-2121

えびの高原

えびの高原霧島温泉一帯はいたるところで硫黄の噴煙があがっていて、近寄ると危険の立て看板がある。これよりえびの高原への道は濃霧に見舞われ視界はゼロ。
晴れていれば、標高1,700mの韓国(からくに)岳や甑(こしき)岳、白鳥岳に囲まれたえびの高原の自然の宝庫を堪能できるはず。流れる霧の中で一瞬、姿をみせるいくつかの火口湖の神秘な湖面に思わず息をのむ。
春にはハルリンドウ、ヒカゲツツジ、ミヤマキリシマなどの花が咲き、夏は緑とさわやかな風、そして秋にはススキと共に紅葉が高原を鮮やかに染め上げる。冬には天然のスケートリンクや霧氷と四季を通して自然が織りなす色彩と造形の美しさを誇る高原だ。

えびのスカイラインの韓国岳登山口近くにえびの市営の自炊の露天風呂温泉があるが、7月になって突然湯が枯れて、休業中だった。昔から湧き流れていた湯が枯れた原因も、元通り湯がわき出る日があるかも分からないという。
高原を下って宮崎自動車道の小林ICの手前に広がる霧島山の裾野には、花の名所として名高い「生駒高原」がある。春は菜の花、ポピー、ツツジが咲き、これからの季節は赤、白、ピンクのコスモスが高原一面埋め尽くす。