リスボンの町とその周辺 ポルトガル(3)

リスボンから約30km、海岸線から僅かに離れたところには、緑の木々で覆われた小高い山々のシントラ山系がある。その樹木に囲まれた山中にはシントラ城を中心に、貴族や富豪たちの館が点在する。かつてイギリスの詩人バイロンがこの地に滞在した折、ここを「エデンの園」と称えたという。1955年、世界遺産の「自然と文化遺産」に登録された深い森の中の王宮や館、落ち着いた美しい風景は、いまはポルトガル国内でも有数の観光地ともなっている。
またシントラの西、約10kmの大西洋に突き出した断崖絶壁はヨーロッパ最西端の岬として知られるところだ。

<コース>
リスボン(Lisboa)−シントラ(Sintra)
全行程 約80km、リスボンより日帰り

シントラ(Sintra)
●王宮(Palacio
Nacional de Sintra)

シントラの王宮(2本の排気筒が目立つ)
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シントラの旧市街を入るとすぐに町の中心レププリカ広場に行き当たる。広場周辺にはホテルやレストランみやげもの屋が集まっている。この広場の上が「王宮」だ。
ムーア人の城跡を基礎に14世紀はじめエンリケ航海王子の父ジョアン一世が建てたもの。かつての王家の夏の離宮で、その後16世紀、マヌエル一世によって現在のメイン部分が増築された。
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王宮から見る街
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シントラの夏の離宮
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室内装飾は、当時の繁栄をうかがわせる豪華なもので、アズレージョ(タイル)で覆われた「アラブの間」、中国陶器や家具で飾られた「中国の間」、カササギが天井一面に描かれた「カササギの間」などがある。また、織田信長が派遣した天正遣欧少年使節団が招かれた間とされる「白鳥の間」には27羽の白鳥が描かれている。各部屋にはそれぞれのエピソードが説明されている。
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城を飾るタイル
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城を飾るタイル
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城を飾るタイル
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城を飾るタイル
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内部の絢爛豪華な装飾とは異なり、外観で最初に目につくのは城の建物の上に突き出た2本の円錐形の塔だ。城の角のようにも見えるこの塔は、中に入って初めて台所の煙突であることを知った。日夜、宴が繰り広げられたのであろう33mもの巨大な2つの煙突の大きな台所からは、当時の客人の顔ぶれや、人の数の多さが偲ばれた。
/入館料 2ユーロ(約280円)
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館は山腹にも
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シントラの街の入り口
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民家の壁
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民家の壁
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民家の壁
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民家の壁
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●レガレイラ宮殿(Palacio e Quinta da Regaleira)
中心部から徒歩で10分くらい離れたところにある宮殿。古城のようだが12世紀に建てられた王族の別邸だった。20世紀になってイタリアの建築家によって改築された。外観や内装はゴシック様式。よく手入れされた庭園もみどころ。また途中にあるアズレージョで飾られた水飲み場も見落とさないように。
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レガレイラ宮殿
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シントラの水飲み場
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●ペーナ宮殿(Palacio Nacional de Pena)

ペーナ宮殿
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町の中心部から少し山を上るようにペーナ宮殿へと約3km。これより徒歩で標高529mの山頂に建つ宮殿まで登るルートと、車で山の裏側へ周り約500mの地点まで上るルートがある。駐車場よりバスで5分ほどさらに山を上ると、城門近くに着く。
廃墟となっていた修道院の建物は、1850年にドイツの建築家によって修復や増築されて完成した城。イスラム、ゴシック、ルネッサンス、それにマヌエルなど各様式を寄せ集めたという奇妙な建築物だ。カラフルな城は珍しい。
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ペーナ宮殿のゲート。市内の
くちばしの家と同じ外壁だ
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ペーナ宮殿内部のアーチ上に陣取る
守り神。貝に座りブドウの木を背負い、
脚は鱗と鰭になっている
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切り立った岩山の上にリスボンの急市街で見た、壁面は尖った石で覆われたユニークな建物「くちばしの家」同様の技法で飾られた城門がある。門をくぐると自然石をそのまま利用した壁などをみながら、急な石畳を登って城内へ。
城の内部にはアメリカ女王の部屋、トルコ人のサロン、王族の寝室、リビングルームとそれぞれ特徴のある部屋があり、なかでもブルーのアズレージョが見事な16世紀の修道院当時の礼拝堂もある。城の窓やテラスからはリスボン市をはじめ、テージョ河口と大西洋の眺めがすばらしい。また城内への第二の門には、頭上には葡萄、足元は魚や貝をあしらった奇怪な彫刻が施され、壁には兵士などをモチーフにしたアズレージョがはめ込まれていた。
/入城料 6ユーロ(約840円)
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宮殿の城壁。遙か下に街が見える
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●ロカ岬(Cabo da Roca)
北緯38度47分、西経9度30分、ユーラシア大陸の西のはずれ。
「ここに地果て、海始まる」とポルトガルの詩人カモインスが詠んだ詩の一節が、岬に立つ十字架の石の塔に刻まれている。岬の先端は高さ140mの険しく切り立った断崖だ。手摺りで囲まれた展望台から、雄大な大西洋を望む。だが、展望台を少し離れると、そこには柵も手摺りもなく、足元から崩れそうな小道がついている。足がすくむような140mもの断崖の下には、岩肌に白波を立てて砕ける波が見下ろせる。
こうして大西洋からの風を受けながら、岬に立っていると、地球の丸味を帯びてどこまでも広がる青い海の彼方に向けて、大陸をめざした人々の姿が浮かんでくる。
(小道は好奇心に駆られた人々が踏み固めたものであり、強い風にあおられて危険でもあるので注意したい)
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岬には観光案内所があり、ここで「最西端到達証明書」を発行してくれる。
料金は5ユーロ(約700円)と10ユーロ(約1,400円)の2種類がある。
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ロカ岬への海岸線
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ロカ岬の標識
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シーズン中は観光客で賑わう海辺の村や町も、いまは地元の人たちの静かな日常生活があり、通り過ぎる道ばたには市場がたっていた。そしてホテルやレストランの多くは休業、ヨットハーバーには人影もなく、係留された船が波間に揺れていた。
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シントラ近くはこういう道が多い
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