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北海道・十勝地方(1)

新緑の季節を迎えた北海道はまだ雪の残る山々も、原生林も牧場の牛も野に出で働く人々も見るものすべてが輝き、躍動感に満ちあふれている。梅雨がないといわれるこの大地は初夏から一足飛びに夏へと向かう。
今回は十勝平野を流れる大河と広大な牧場、大雪山系の懐に抱かれた自然の驚異や美に感動したドライブだった。

<コース>
札幌または千歳新空港−夕張−日高−日勝峠−帯広市−陸別−足寄−帯広−十勝清水−新得町−鹿追−然別湖−糠平湖−幌加温泉−三股−上士幌−帯広

●千歳空港から日勝峠を越えて帯広へ
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日勝峠への道(日高側)
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夕張メロンの産地を抜け、石狩と十勝を結ぶことから名付けられた“石勝樹海ロード”274号線の山道を行く。自然保護に配慮してつくられたという、原生林の中に一本の道が続く。
この街道は札幌−帯広間を結ぶ主要道路のため交通量は多い。だが新緑が美しく約100kmの長い距離も短く感じる。
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標高1,020mの日勝峠の最高点はトンネルでくぐり抜けるが峠を下ると間もなく、十勝平野の全容が見渡せる展望台へと着く。地平線の彼方にかすんでしまうような広大で平らな大地に「これが北海道だ!」と感動する眺めだ。十勝岳、大雪山系も遙か平野の彼方に見える。
展望台より一気に下ると、平らな大地のはじまり清水町だ。一面の緑の中、牛の群れが草をはむ。
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日勝峠を越え十勝側で一休み
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●帯広市
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中央に大雪山系から流れる十勝川に近い人口約18万の帯広市は、十勝一帯の中心地。
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広大な畑の中を足寄へと向かう
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●足寄から陸別
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帯広から国道241号線を北へ。途中「道の駅・ピア21しほろ」をのぞきながら足寄湖に着く。ダム湖を見下ろす丘の上には「道の駅足寄湖」とその少し上にはチーズ工場「エーゼルケーゼ」がある。
チーズ工場ではチーズのできる工程などがパネルで展示され、またチーズが熟成される部屋をのぞくこともできる。売店ではできたてのチーズも売っている。テラスからは足寄湖が望める。
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上士幌付近の牧場
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足寄湖道の駅。チーズ工場でもあった
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北見から池田を結ぶ“ふるさと銀河線”足寄駅は駅と一緒に多目的な施設ができていた。1日数本しか通らない電車の鉄道駅は、プラットホームと単線のレールの昔懐かしい風景を残していた。しかし、陸別まで続いていた路線は利用客が少なく、赤字経営に耐えきれず、うぇんせんじちたいからお資金援助も無いため2006年に廃止されている。
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●足寄動物化石博物館(フォストリーあしょろ)
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立派な石造りの建造物の中に「アショロア」と名付けられた動物の化石が展示されている。1976年、世界で初めて足寄町で発見されたもの。
束柱類最古(2800万年前)に生息していた。
その化石を組み合わせた骨格と、そこから推察してつくられた動物のほか足寄周辺から発掘されて古い化石を元に絶滅したさまざまな動物のレプリカも展示されている。
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足寄博物館の展示室。
アショロアはこの土地で見つかった
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●陸別
ふるさと銀河線りくべつ鉄道(ふるさとぎんがせんりくべつてつどう)
2006年(平成18年)4月21日に廃線となったふるさと銀河線の陸別駅跡地および陸別駅 - 分線駅間の廃線跡を、鉄道車両の動態保存を目的とした整備を行い、2008年(平成20年)4月20日に開業した[1][3]。正式な営業運転の開始は同月26日から行われた。
夏季の季節運行の形態となっており、初年度は10月26日まで運行され、目標の約1.6倍の収入を上げた[5]。
陸別駅構内では、ふるさと銀河線で実際に営業運転されていた気動車の乗車体験および運転体験、トロッコの乗車体験ができる。また、再整備された転車台の見学もできる。
跨線橋には、国鉄時代の蒸気機関車の写真およびふるさと銀河線時代の写真、「ふるさと銀河線友の会・メモリアルレール」のネームプレートが展示されている。
トロッコ体験
4人乗りの足こぎ式トロッコにて駅構内の専用線を1周走行できる。
運転体験Sコース
駅構内を15分程度往復運転ができる。対象者は小学校高学年以上または身長130cm以上。
運転体験Lコース
駅構内500mをCR70・75形気動車を使用して約80分程度往復運転ができる。完全予約制。対象者は18歳以上。
運転体験・銀河コース
2012年(平成24年)4月より開始。
北見方面の駅構外の本線上(金澤踏切 - 松浦踏切間、1.6km)をCR70・75形気動車を使用して約80分程度2往復運転できる。完全予約制。対象者はLコースを1回以上体験していること。
運転体験・新銀河コース
2020年(令和2年)4月より開始。
体験運転「銀河コース」を延伸(松浦踏切 - 石井踏切間、1.6km)、既存のコースに加えて合計3.8kmの運転体験ができる。対象者は銀河コースを1回以上体験していること。
運転体験・分線コース
2021年(令和3年)4月より開始。
旧分線駅までの区間(5.7km)を運転するコース。日本一長い区間の運転体験が楽しめる[2]。対象者は新銀河コースを1回以上体験している。 営業期間:4月下旬 - 10月下旬
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道の駅から少し山を登ったところに、「銀河の森天文台」がある。晴天率の高い陸別は天体観測に適していて、日本に3台しかない直径115cm反射望遠鏡はある。また人工オーロラ発生装置などもある。見学できる。
/TEL 01562-7-8100
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陸別の天文台。一般の人も入場できる
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●オンネトー湖
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足寄・シオワッカは
石灰華半ドームが川縁にある
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陸別から足寄へ戻り阿寒湖へ向かう国道241号線を約15kmに国道とほぼ平行して走る道道664へと入る。ここからオンネトー湖までは約20kmだ。
この道沿いにはシオワッカ(足寄石灰華半ドーム)がある。山から流れ出る冷泉に含まれる炭酸カルシウムが沈殿し、ドーム状に成長したもの。道路から少し下ったところに炭酸カルシウムのドームがある。
珍しいものなので、時間があったら立ち寄りたい。
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また足寄で有名な巨大なふき「ラワンぶき」の産地もこの道道沿いにある。
「ラワンぶき」とはこのラワン(螺湾)地区の沢沿いのみに見られる大型の葉を持つ多年草で、世界に約20種類ある。ほとんどが北半球に分布する。
かつては草丈が4m、葉の大きさが2mに達していたものもあったが、現在は次第に小型化している。それでも人の背丈はゆうに越える。
根本近くは直径10cmもあるものもあるが、太く大きいわりには柔らかく風味もある。保護地なので採ることは禁じられている。
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大人の身長よりずっと大きいラワン蕗
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オンネトー湖は雌阿寒岳の噴火活動で堰き止められてできた湖。標高623mにあり、周囲2.5km、平均水深3mで最大水深は約10mある。オンネトーとはアイヌ語で「年老いた沼」という。
今でも湖底から弱酸性の温泉が湧き出して湖水いはミネラルイオンが溶け込んでいる。そのため雌阿寒岳を映す湖面は天候、風向きや見る位置や角度によって、その湖水の色を変える。別名「五色沼」ともいわれる神秘的な湖である。
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●湯の滝
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オンネトー、湯の滝
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このオンネトー湖から徒歩で1.5km、約30分のところに「湯の滝」がある。
原生林の静寂を破る滝。苔むした岩肌を流れ落ちる落差50mほどの岩の上から2条の湯が流れおちる。この滝は、世界で唯一マンガン鉱床が現在も生成されつつある珍しいところなのである。
このマンガン鉱床を育てているのは、マンガン酸化細菌という糸状藻類という微生物らしいということが最近わかったとか。この微生物が温泉に溶けているマンガンを沈積し、鉱床を成長させるというのである。
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湯の滝には露天風呂が2つある。だが、滝の上にある源泉の自然の露天風呂は現在マンガンが多く含むことがわかり、入浴禁止。
滝の下には丸いコンクリート製の風呂があり、脱衣所も用意されている。湯はぬるめだが、湯量は豊富。新緑に包まれた原生林の中、滝を眺めながらの入浴は最高。帰路徒歩30分の道のりもすっかり忘れてしまうほどだ。
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滝の下に野天風呂
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