福島・会津エリアをロングドライブ(1)



福島県は太平洋沿いの「浜通り」、新幹線や高速道路が貫く「中通り」、磐梯山や檜枝岐、只見と山岳地帯の多い「会津」と3つのエリアに区分されている。どれも通称だが、海岸沿いや盆地の多い中央部、山間部では気象庁の天気予報も違う。とくに「会津」の西は豪雪地帯だ。それだけに季節が足早に過ぎていく自然は美しい。
今回は1回目を磐梯吾妻スカイラインに代表されるドライブコース。2回目は蔵の町・喜多方からかつての宿場町大内宿へ。そして紅葉の山岳ドライブと3回に分け紹介したいと思う。

(1)磐梯吾妻と土湯峠の温泉
(2)蔵の町喜多方と大内宿
(3)檜枝岐と奥只見山岳ドライブ


(1)磐梯吾妻と土湯峠の温泉


吾妻・磐梯の山々には「磐梯吾妻スカイライン」「磐梯吾妻レークライン」「磐梯山ゴールドライン」という山岳景勝地を走る観光有料道路がある。
この他、猪苗代湖を含めたこの一帯は磐梯朝日国立公園の中にあり、初夏の新緑、秋の紅葉、冬のスキーなどが楽しめ、四季を通して訪れる人も多い。とくに数ある温泉は人気があり、秘湯と呼ばれる昔ながらの湯治場なども少なくない。

 

 

 

 

 

 




<コース>
福島市-磐梯吾妻スカイライン-土湯峠-(国道115号線)-磐梯吾妻レークライン-檜原湖-(国道459号線)-喜多方市
全行程 130km



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磐梯吾妻スカイラインは福島市から約10km西、高湯温泉と土湯峠を結ぶ全長約29kmの山岳道路で「日本の道100選」にも選ばれるほど雄大でダイナミックな景観を誇る観光有料道路がある。
残念ながらこの日は天気予報では晴れだったが、高湯温泉に着いたころには雨が降り出した。


●高湯温泉

泉質は酸性・含硫黄で自噴源泉10ヵ所、自然の落差で湯槽まで引湯した掛け流しで、引湯の源泉の位置によって各旅館の場所が決められている。正真正銘の掛け流しの温泉宿ばかりだ。
旅館共同組合で運営管理されている共同浴場“あったか湯”がある。
ここはすべて露天風呂で、源泉からの白濁の湯があふれている。隣接する公園には豊富な湯を引いた足湯が作られていた。平成19年春に一般無料開放される。
/問い合わせ 高湯温泉観光協会
  TEL 0245-91-1125


高湯に新設された足湯の広場

 


高湯の温泉神社


薬師堂の灯籠は湯煙で黒くなっていた


●磐梯吾妻スカイライン


高湯温泉から少し上ると、30mの高さから水しぶきを上げて落下する不動滝を見る。
生憎の霧の中からの眺めだったが、色づき始めた木々の間を轟音とともに流れ下る滝は幻想的でもあった。

作家・井上靖が「吾妻八景」と名付けた絶景ポイントが続くという磐梯吾妻スカイラインは一面乳白色のガスで覆われていた。
高湯料金所で「雨天や視界の悪い日は通行料は無料にはならないのかな?」と通行料1,570円を払いながらゲートの係の人に冗談を言ったら「好天に恵まれる日は少ないんだよ」とつれない返事だった。


不動沢橋から見下ろす不動滝
(画像をクリックすると拡大写真を表示します)

 

「樹海の彼方に蔵王が浮かび、安達太良の峰の連なりを見ながら、このコース最大のみどころ浄土平へ。火山土砂の吾妻小富士(1,707m)、火山活動による有毒ガスで草木の生えない不毛の大地、現在も活動を続けている活火山、一切経山(1,948m)の高層湿原などの散策をも楽しむ。
やがてブナ林を走り、秋元湖、檜原湖などを遠望する湖見峠を経て、土湯峠へと下る」と、案内書には書いてあるが、前を走る車のテールライトすら見えない濃霧である。雨も止みわずかに視界が広がりだしたころ、スカイラインを抜け、土湯峠に着いていた。

 


磐梯吾妻スカイラインから福島方面を見る


霧の白樺林(磐梯吾妻スカイライン)


○秘境・土湯峠温泉郷

土湯峠には、秘湯ファンを満足させてくれる温泉が点在する。露天風呂が自慢の新野地温泉、鉄分を含んだ赤い湯の赤湯温泉、昔ながらの湯治場の横向温泉など、7ヵ所もの温泉が湧く。
本来、湯治などが目的だった昔からの温泉は、湯槽が小く、たっぷり湯の掛け流し。入るたびに湯があふれ自然に循環するので清潔だ。秘湯とか湯治湯とはそんな温泉のことなのだ。その中の4ヵ所を訪ねてみた。冬季は休業のところもあるので、確かめてから出かけたい。


●新野地温泉


県道30号線沿いにある温泉。100年以上の歴史のある野地温泉に隣接する。昭和30年代に掘削、豊富な湯量で露天風呂が自慢。2本の噴気が勢いよく吹き出している。源泉から湯煙が上がり木道をわたって露天風呂へ。白濁の硫黄泉が惜しげもなく流れでる掛け流し温泉である。


新野地温泉の噴気

 

岩と緑に囲われた木の湯舟から豪快な湯煙を眺めながらゆっくり湯に浸かれば身も心もリラックスする。木造のひなびた温泉風景の内湯もある。硫黄泉。効能は高血圧、動脈硬化、糖尿病、慢性皮膚炎、切り傷など。
/外来入浴料 500円 宿泊設備もあり。
/問い合わせ 相模屋旅館 TEL 0242-64-3624

 


新野地温泉の露天風呂


露天風呂に湯は勢いよく流れ込む


●赤湯温泉

県道30号線からわずかに入ったところにある一軒宿「好山荘」。この付近の温泉の多くは乳白色の硫黄泉だが、内風呂の赤湯は、その名の通り鉄分を含んだ赤味のある単純泉。敷地内にある露天風呂は白い濁り湯だ。
自炊もできるが部屋数が少ないので自炊しての湯治には予約が必要。赤湯の効能は、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺ほか。
/外来入浴料 500円、宿泊設備あり。冬季閉鎖。
/問い合わせ 好山荘 TEL 0242-64-3217

 


赤湯温泉の露天風呂


鉄分を含む湯がすべてを茶色に染める


●幕川温泉

スカイライン土湯峠の料金所から、スカイラインを戻るように谷間の道を辿る。こんな山奥に温泉宿などがあるのかと、いぶかしく思ったころ深い木立に囲まれたプレハブと木造の建物が2棟建っていた。
その1つ、水戸屋旅館の露天風呂は、いまにも壊れそうな板塀とよしずに囲まれた混浴湯。泉質は硫黄泉で効能は、新野地温泉と同じ。
/外来入浴料 500円、宿泊設備あり。
  冬季閉鎖。
/問い合わせ
  水戸屋旅館 TEL 0242-64-3316
  吉倉屋旅館 TEL 0242-64-3617


幕川温泉の宿は2軒だけ

 


幕川温泉の露天風呂


幕川温泉の池


●横向温泉


県道30号線から国道115号線に合流する手前、昭和初期の看板と鉄骨製の看板が立っている。そこからダート道を約1km行ったところにある自炊客専用の一軒家。開祖元湯中の湯旅館。一泊3,500円。近くにスキー場もあるため冬も営業している。
ひなびた宿で、玄関脇の休憩所には、昭和初期のボロボロの宿帳が置いてある。階段を上がった別棟には共同炊事場があり、廊下に電子レンジが一つあった。


横向温泉への立派な門柱。
400メートルほどで中の湯

 

木造りの湯槽は一応男女別だが混浴で、板を一枚隔てた女性専用風呂もある。泉質は単純泉(含鉄)で、やや白みがかっていた。温度は41度だが温め。
混浴用の2つの湯槽は泉質が多少異なり、一方は1000年の昔から湧き出ている湯だと、常連客の男性が教えてくれた。効能は筋肉痛、関節痛、打ち身、神経痛など。
/外来入浴料 300円、TEL 0242-64-3341

 


ひなびた湯治場


湯気に煙る昔ながらの混浴の浴槽


●磐梯吾妻レークライン

深い木立に囲まれた、秋元湖、小野川湖、檜原湖の3つの湖を眺めながら約13kmのワインディング。国道115号線から県道70号線を辿りレークラインへと入る。

 


湖への下り。快適なドライブだ


中津川レストハウス。ここに駐車して川へ下る

 

木々の間から秋元湖がわずかに見えるだけの道の途中、新緑や紅葉で有名な中津川渓谷入り口のレストハウスに着いた。

渓谷には徒歩で、約15分下る。浸食されて奇妙な形の石の間を清流が流れる。
深い谷は間もなく紅葉に彩られ、その美しさは筆舌に尽くしがたいと、地元の人が語ってくれた。

渓谷まで下って眺める景色もいいが、上部から見下ろす渓谷美は感嘆ものだ。紅葉の盛り(10月中旬~下旬)に訪れたい。


水に磨かれた岩(中津川)
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中津川に架かる橋(磐梯吾妻レークライン)
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光る湖(磐梯吾妻レークライン)

 

明治21年(1888)磐梯山の水蒸気爆発によってできた大小300余りの湖沼群が、いまの磐梯朝日国立公園だ。その一部であるレークラインの見どころに、3つの湖が一度に見渡せる「三湖パラダイス」がある。正面には磐梯山、左に秋元湖、右下に小野川湖、そして右上には檜原湖が一望できるところだ。
これより少し下り小野川湖を見下ろす「涼風峠」に出ると間もなく剣が峰料金所だ。
/有料道路 930円。

 


秋元湖


檜原湖


●五色沼

犠牲者477人を出した磐梯山の爆発はおよそ30億トンともいわれる岩石と泥流が多くの川をせき止めた。そこで誕生したのが檜原湖、小野川湖などをはじめ大小さまざまな湖沼群である。これらの沼や湖は水質が一定ではない。なかでも酸性度の高さや、沼によって水の成分と沈殿物の違いで独特の色を見せるのが五色沼なのである。
駐車場からすぐにある沼は五色沼では最大の毘沙門沼でエメラルドグリーンの色をした湖水は神秘的で、思わず息を飲む。この日は曇り空だったが、太陽光線を受け刻々と変わる色彩に魅せられて、何十回も訪れる人も珍しくないという。

 


五色沼・毘沙門沼


五色沼はすべてが遊歩道でつながっている
(画像をクリックすると拡大写真を表示します)

 


毘沙門沼、みどろ沼、弁天沼、るり沼、青沼などを巡るのは約1時間のハイキングコースになっている。
駐車場に車を預け、周辺はアカマツ林の緑と色づきはじめたヤマウルシやツタウルシ、季節や日差しで彩りを変える五色沼を、ゆっくり散策したい。


棚田を走る(喜多方への459号線近く