渦巻きとボート

ノルウェーのボードーで巨大渦巻きを見に行きました。大きなゴムボートで突っ走るのですが「落ちたら5分は探すが、おそらく見つからない」そうです。乗ったとき80歳オーバーのジジ・ババですが、即答で参加すると返事をしました。操船は豪快で、バイキングの子孫の操縦だからでしょうか、そりゃ、猛烈でした。



 ベルゲンからヨーロッパ最北の港町、キルケネスまでノルウェーの大動脈とも言える貨客船、フィテルーテンに乗って北上した。島やフィヨルド、山などで国土が、切り分けっれ、隔てられたノルウェーは、鉄道でさまざまな都市を結ぶのは不可能に近い。バイキングの時代から、船が主要な交通機関になっていたのは頷ける。

 北行きの船は海が内陸に深く切れ込んだ所にあるボードーの港で、約6時間停船する。客よりも荷物を運ぶために開設された航路だから、荷物優先は当たり前だろう。船をチェックするのもこの港が北へ向かうと最後になる。観光客の増加に伴って貨客船に変化し、今は一日一便、ベルゲンから最北の港町、キルキスクへと約一週間かけての航行だ。

ロビー兼展望室へ出向いたら「ボートで渦巻きを見に行かないか」と船専属の旅行社の人に声をかけられた。冒険的なことが大好きなので歳も顧みず参加することにした。

 
「さあ、乗ろう」 装備は万全。気合い十分のババ


 もこもこの防寒兼浮上用のつなぎを着せられた。冷たい水中に落ちても、浮き上がり、10分以上は問題なく生存できるとツアー・ガイドは言っていたが、船頭は渦潮の中へ落ちたら「5分は捜索するが、まず生存のl可能性はない」と言い切った。



 一隻のゴムボートに9人が乗り込む。箱のようなものが縦に並び、それにまたがる。各“席”の前にはコの字型の鉄のバーがあって、それにつかまる。ヤマハのドデカいエンジンがついていて、猛烈な加速だ。





 靜かな海を30分ほど航行し、フィヨルドに進入。自動車用の橋の下の靜かな場所で潮が満ちてくるのを待つ。外海と長く切れ込んだフィヨルドで潮の水位が大きく変わり、渦潮が発生する。見上げる橋が有り、その下あたりを中心に大きな渦巻きが潮の満ち引きによって発生する。海峡の幅も渦の大きさも、鳴門海峡と同じように感じた。違うのは鳴門海峡は渦潮見物の船がもっと大きく、窓もあってノルウェーのように、飛沫を浴び、手を離すと渦の中に転がり落ちそうなボートではないこと。しかし、船頭たちは「この渦は世界一」と言い張って譲らない。ま、どっちでも良いことなので、聞きおく、の心。




「落ちた人はいないので安心して下さい。ただ舟は大きく揺れますから、しっかりとつかまっていT下さい」

それだけの注意でいやはや、渦が巻き始めると、ボートは渦の発する飛沫に飛び込んだり、ほどほどの渦は突っ込んで反対側に駆け上がったり、さらにはデカイ渦の“壁”すれすれを爆走だ。たっぷり写真を撮ろうと最前部に陣取ったが、考え違い。片手を離してカメラを構えるなど、至難の業と納得し、ひたすら水面と渦を見つめてバーを握りしめる有様だった。



とまあ、そういうわけで渦潮が収まると、嘘のように靜かな海面に変わる。スリルたっぷりで、日本じゃちょっと味わえない体験だった。好んで乗ったのに、ほっとするのはジェットコースターが降車場に到着した時と似た気分だった。


フネはフネでも大違い

フネに乗ったついでに、貨客船の様子をちょっと掲載します。

 

最前部の3階でしょうか、4階にあたるのでしょうか、展望ロビーがあります。自由に利用出来るようになっていて、もちろん無料です。オーロラの出る時間になると、ここに陣取り、すぐ裏側のドアから広いデッキに出ると、フィヨルドの様子が見渡せます。もちろん天空も…。

ロビーのソファでのんびり外を見ていると、なんだか空が“ざわつく”ように感じます。

「それ来た」

と外へ出ます。その頃、操縦室から「ノーザンライトが出てきます」の放送があり、人々がデッキに現れます。そしてオーロラ。我ら運が良かったようで、飽きるほどオーロラにご対面できました。

    

 航海中、オーロラの前に、サービスがあります。夕方、階上デッキでスモークサーモンを無料で振る舞います。なかなかの味覚でご相伴に預かりましたが、約1週間の航海なのでチャンスは一度だけでした。


ベルゲン行き、南下する姉妹船とすれ違いました

 そんなこんなで貨客船の旅も結構楽しめます。状況によっては深いフィヨルドの奥にある集落まで航行したり、船腹が岸壁とこすれるのではないかと気になるような、狭い航路を通ったこともあります。3度ほどしか乗っていませんが、フィヨルドの旅も昼は周囲の漁村や山々、夜はオーロラと、結構楽しめます。