スロバキアからチェコへ
テルチとチェスキー・クルムロフ

池に映るテルチの旧市街 首都プラハ(Praha)から北へ遠く離れたテルチ(Telč)は12世紀までさかのぼれるという歴史がありながら時代に取り残されたため、もう何世紀も時間が止まっていたかのよう小さな町だ。ボヘミアの高地にひっそりと佇む家々の建築様式はルネッサンス及び初期バロック様式で、町の広場にはパステルカラーの可愛い建物が並ぶ。
この町が再び脚光を浴びたのは、1992年ユネスコの世界遺産に登録されたからだ。

このテルチより約80km西、ボヘミアの豊かな大地が広がる中に、同じ1992年世界遺産に加えられたチェスキー・クルムロフ(Český・Krumlov)の町がある。大きく蛇行して流れるモルダウ川沿いの旧市街は、13世紀に創建された城を中心に、石畳の細い路地に中世の町並みが続く。

この二つの世界遺産の町へは、オーストリアからスロバキア(Slovenska)を経てチェコへと入った。国境から高速道路でブルノ(Brno)まで走り、そこから国道23号線をテルチ、チェスキー・クロムロフへ。さらに首都プラハまで約500km、3泊4日のドライブだった。


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ドライブライン

<コース>
オーストリアの首都ウィーン(Wien)から約60km、E58号線でスロバキアの首都ブラチスラヴァ(Bratislava)へ。

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●ブラチスラヴァ城

1993年、チェコとの連邦制を解消し、主権国家となったスロバキアは、日本の約8分の1の国土を持つ。黒海とバルト海を南北に結び、ロシアとボヘミアを東西に結ぶ交易の十字路として、古くからさまざまな人々や文化が往来した。その首都ブラチスラヴァはドナウ川に面し、かつて長い間ハンガリー王国の首都として栄えた。そのドナウ川のほとり、小高い丘の上にそびえているのがブラチスラヴァ城だ。
12世紀にはロマネスク様式の石造りの城だったが、15世紀に入ってゴシック様式の要塞に改築された。現在の四角い建物は17世紀にオスマン朝の侵略に備えて堅固な造りとなった。この改築で建物の四隅に4つの塔も付け加えられた。その外見から“ひっくり返したテーブル”と呼ばれ親しまれた。

ブラチスラヴァ城
ブラチスラヴァ城
ブラチスラヴァ
ブラチスラヴァ

16世紀、ハンガリー王国の首都となったブラチスラヴァは、1563年から1830年までの長い間、城の裾にある聖マルティン教会でハンガリー王の戴冠式が行われ、ここで即位した王は11人、女王は7人を数えた。18世紀には女帝マリア・テレジアも即位し、彼女の居城ともなった城である。
城からは眼下に約1km四方の小さな旧市街を見下し、新市街の向こうにブドウ畑が広がるのどかな町だ。国土のほとんどが山岳地帯だが、このブラチスラヴァのある西部は平原が広がり豊かな穀物地帯となっている。

ブラチスラヴァ市街の展望
ブラチスラヴァ市街の展望

城から見るドナウ川
城から見るドナウ川


城へ上る広場からの町
城へ上る広場からの町
街角には洒落た飾りもある
街角には洒落た飾りもある

スロバキア名物の白ワインの産地もこのあたりだ。ブラチスラヴァからチェコのブルノ(Brno)へは高速道路も通じているが、あえて農村地帯を走る田舎道(県道2号線)をチェコへ向かった。
昼食のレストランを探したが、畑と森に続く道沿いにはお茶屋の影さえなく、こころ細くなったころ古く大きな教会を見つけた。教会の脇には、ビールの絵の看板がある家があった。

スロバキアの田舎道
スロバキアの田舎道
教会の宿舎下を通過する地方道
教会の宿舎下を通過する地方道

その小さな入り口の中から男たちの声が聞こえてきた。入ってみると、十数人、二人の女性を含めた男たちが真っ昼間だというのに大きなジョッキでビールを呑んでいた。薄暗い部屋の奥には中庭があり、ボディランゲージで食べ物を頼むと、太くて真っ黒なソーセージがでできた。
 大丈夫か?と聞きたいような"料理”?だった。右下の写真がそれ。見た目はどう見ても旨そうには思えない。自家製というソーセージにウェイターは自信たっぷり。トラッカーたちも頷いてみせる。「君たちは良いものを選んだ」とぃゥ分一気。食ってみたらなる程、実に旨かった。クルマの旅なので,ここでビールを喰らう訳にもいかない。


食堂で会ったトラック・ドライバー
食堂で会ったトラック・ドライバー
このソーセージは絶品でした
このソーセージは絶品でした

●テルチ(Telč)=以下チェコ

スロバキアとの国境からチェコのブルノまでは約50km。ブルノはプラハに次いで大規模な国際見本市が開催される商業都市だ。多くの図書館・博物館・大学などがある学問の町としても名高い。旧市街の修道院では遺伝学のメンデルがエンドウの交配実験を行ったところとしても知られている。
このブルノから国道23号線を約100km、パステルカラーの建物が並ぶテルチに着いた。町は古くは天然の要塞でもあった3つの池に囲まれた中にある。橋を渡りテルチ城壁のホルニー門をくぐったところから旧市街がはじまる。


池に映るテルチの旧市街
池に映るテルチの旧市街
おとぎの世界への入り口
おとぎの世界への入り口

12世紀から続いた町の歴史は、1339年フラデツ家(Hradec)によって統一され、ルネッサンス風の町として発展した。1530年、領主ザハリアーシュの時代、この町は大火に見舞われ全焼したことを機会に、領主は、ルネッサンス様式および初期バロック様式に基づいて設計することを市民に命じた。それが、現在修復保存されたのが世界遺産テルチの町である。

●ザハリアーシュ広場

ザハリアーシュ広場
ザハリアーシュ広場


旧市街の中心地にある広い石畳の広場には花壇があり、そこには14世紀、ヨーロッパで猛威をふるったペストの追悼碑があり、その先端には犠牲者を天国に導くマリア像のある塔が立つ。それを囲むようにピンク、黄色、青のパステルカラーに塗られた壁に彫刻や白ペンキで縁取りされたメルヘンチックな家々が並ぶ。オモチャの街のようだ。家をかたどり,広場の街並みそっくりのセットも売っていたが、旅ての荷物になるので"3軒”ほど買ってお終い。家の棚に並べたが、ちょっと寂しい寒村になってしまった。

パステルカラーの家々
パステルカラーの家々
ペストの追悼碑
ペストの追悼碑

独特な飾り屋根の家は、ベルギーやオランダなどでもよく見かける造りだ。アーチ型の入り口の中は家々の軒先でアーケードになっている。回廊のような通りには、みやげ屋やレストラン、カフェなどの店があるが、昔はさまざまな物が売り買いされたマーケットになっていたのだろう。

家々の1階は表がアーケード
家々の1階は表がアーケード
アーケードと家は一体になっている
アーケードと家は一体になっている

広場への通路
広場への通路
お洒落な2階の窓からほほえむ主婦
お洒落な2階の窓からほほえむ主婦

広場の突き当たりにはテルチ城がある。13世紀ころまではゴシック様式建築だった城は16世紀後半に領主ザハリアーシュがイタリアの建築家によってルネッサンス様式に改築させた。城の内部は豪華な内装や装飾品で飾り立てられている。ガイド付きで見学が出来る。その隣りは聖ヤコブ教会があり、教会の塔へ上り町を見下ろすことができる。
 城壁に囲まれた旧市街を出ると、ローカル鉄道の駅、テルチがある。周辺にはホテルや小ぎれいなペンションもあるので、余裕が有れば泊まってゆっくりと街を見るのも一興だろう。

広場には花壇がある
広場には花壇がある
チェコの車種別速度制限標示
チェコの車種別速度制限標示

●チェスキー・クルムロフ(Český・Krumlov)

ボヘミア地方を往く
ボヘミア地方を往く

テルチから西へ約80km。オーストリアの国境に近いボヘミアの豊かな大地を走る。
小麦畑、ブドウ畑、ときには草原であったり森であったり、ポプラや白樺の並木の道沿いにポツンと建つ一軒の民家や小さな集落が続いていた。

ヴェルタヴァ(Vltava)川、私たちにはモルダウ川と呼ぶ方が馴染み深い。そのモルダウ川の上流にあたり、オーストリアから25kmほど北に位置するチェスキー・クルムロフは、13世紀、南ボヘミアの豪族ヴィートコフ(Vitkov)の城からはじまった。14世紀にはヴィートコフ家は断絶、以後ロジェンベルグ(Roemberk)家が支配者となり、16世紀城と町は最盛期を迎えた。その後も代は変わったが、中世以来拡張もされず、あまり戦略的な場所でもなく、首都から距離的にも遠く、近代も開発されず現在に残った。

チェスキ-・クロムロフの街
チェスキー・クルムロフの街

城は谷間の“高台”にある
城は谷間の“高台”にある

町は谷川からはい上がるように作られている
町は谷川からはい上がるように作られている

川遊びは盛ん
川遊びは盛ん

町へはここから坂を下る
町へはここから坂を下る
街角
街角

洒落た窓はこの町にも
洒落た窓はこの町にも
土産物屋の店先
土産物屋の店先

旧市街は、大きく屈曲して流れるモルダウ川が包みこむような地形の中にある。チェスキー・クルムロフ城のひときわ高い青く丸い塔、赤い屋根に白い壁の家々を縫う石畳の細い路地や広場と、中世の町並みをそのままに残すさまは、世界の中の最も美しい町に数えられている。
1992年ユネスコ世界遺産に登録されたいま、世界中から訪れる観光客に、いま、この町の歴史始まって以来の賑わいをみせているにちがいない。

レストラン
レストラン
川縁のレストラン
川縁のレストラン

坂と階段の町でもある
坂と階段の町でもある
川下りも人気です
川下りも人気です