東北の旅(緑の中を走る) 奥入瀬渓谷と八甲田山周辺編 
下北半島を下って十和田市から奥入瀬渓谷へ。十和田湖畔に出て残雪の八甲田山のふところを抜け弘前市まで。 このルートは東北の観光の名所、初夏から秋の紅葉までひっきりなしに通る大型観光バスとともに、さわやかな風の中を走るドライブコースだ。 花見で名高い弘前城内は、新緑に彩られ天守閣から眺める岩木山の裾野に広がるリンゴ畑は、いまごろ白い花を咲かせているだろう。間もなく訪れる夏、その北国の短い夏を謳歌しようとするかのように人も自然もいま輝いていた。

<コース> 東京-(東北自動車道)-仙台-(国道45号線)-松島-(県道9号線)-東北自動車道大和IC-青森-(国道4号線)-浅虫温泉-野辺地-(国道279号線)-むつ-恐山-薬研温泉-大畑町-(国道279号線)-大間崎-(国道338号線)-仏ヶ浦-むつ-(国道279号線)-十和田-奥入瀬渓谷と十和田湖-八甲田-酸ヶ湯-弘前-盛岡-(東北自動車道)-(磐越自動車道)-会津若松-(東北自動車道)-東京 全行程 約2,000km(今回分 約120km)、6泊7日

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●奥入瀬渓谷
十和田市の中心から十和田湖の標識に従って国道102号線を25kmほど奥入瀬川に沿って走ると十和田温泉郷に出会う。渓流の美しさとともに新緑に紅葉に自然の織りなす色彩、空気、風、そして激しく、緩やかに流れる水の音に誘われて全国から大勢の人々がやってくる。その絶妙なハーモニーはまさにこれぞ自然のマイナスイオンの宝庫である。
 奥入瀬渓谷の新緑 (画像をクリックすると 拡大写真が表示されます)
| 十和田温泉郷近くの焼山より十和田湖畔の子ノ口まで全長約14km、この渓流美をゆっくり味わいたっぷりとマイナスイオンを浴びたい人には渓流沿いによく整備された遊歩道があり、約4時間ほどだ。 十和田湖を水源として流れる水はまるで湧き水のように透明だ。 深い森に囲まれ直射日光が降り注ぐところが少ないため柔らかな木漏れ日の下、穏やかにあるときは急流となって流れ下る水のなんと幻想的なことか。 |
焼山を過ぎるとところどころに駐車場はあるが、流れが二股に分かれた“三乱の流れ”から少し上った“石ヶ戸”に駐車場らしいところがある。 駐車場といっても狭い渓谷の中、往復2車線道路の両側だ。大型バスがひっきりなしに出入りをするのでスペースを見つけるのは大変だ。このあたりは路上駐車の車も多いので注意。
石ヶ戸とはこの地方の方言で「石でできた小屋」という。流れのほとりの桂の巨木に支えられた大きな一枚岩が屋根のようになっている。 奥入瀬渓流の美しさの一つには、流れの中の岩や中州に苔や樹木が育ち、ときには可憐な花をつけるものまである。十和田湖から流れる水は決して増水しないことによる。 |  奥入瀬渓谷の山ツツジ
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この駐車場にはウッディな外観の休憩所がある。ミネラルを多く含んだ奥入瀬の湧き水を使った商品など販売している。 渓谷沿いには周囲の岩壁から幾筋もの滝が流れ、雲井の滝、双竜の滝などの名瀑が合わさって見事な渓流美を作りだしている。中でも本流にある「銚子大滝」はこれらの滝のハイライトといえる。この大滝により魚が止められたため、明治になってヒメマスを放流するまで十和田湖には魚がいなかった。
●十和田湖
青森県と秋田県にまたがる十和田火山中央部のカルデラ湖。湖面標高が401m、透明度20mの深い藍色の水をたたえている。周囲の外輪山は落葉樹が生い茂り、新緑や夏の濃い緑もこころ洗われる清涼感のある美しさだが、秋の紅葉は日本随一とさえいわれている。 この地方の夏は短く、ストーブの入らない時期は盛夏の一ヶ月ほどだそうだ。早い秋はひと雨ごとに木々を色づかせる。紅葉は9月からはじまる。
十和田湖のシンボルとして有名な乙女の像は、高村光太郎の作で、智恵子夫人がモデルだともいわれている。子ノ口から国道103号線を辿る。この乙女像付近が十和田湖周辺を探索する中心部だ。観光遊覧船も子ノ口とを結んでいる。 取材日はあいにくの曇り空で視界は悪く、冷たい風が吹き荒れていた。十和田湖を一周する国道は夏はかなりの混雑だと土産物屋の主人は言ったが、少しシーズンを外すとドライブには最高のところだろう。
●八甲田山
 十和田湖から八甲田への道
| 十和田湖子ノ口から国道102号線を湖から離れるように上る。途中十和田湖を見渡せるところに駐車場があり、その先では奥入瀬の入り口である焼山方面へと下る道にぶつかる。 奥入瀬渓谷とは打って変わって、八甲田山に向かって延びた交通量の少ない広い道を一端焼山へ下る。焼山と分かれて国道394号線を黒石方面へ辿る。 |
八甲田山は酸ヶ湯岳(1,585m)を最高峰に高田大岳、井戸岳、赤倉岳などいわゆる甲田八峰の山々を指す。南面は十和田湖へと続く。1902年青森歩兵連隊の雪中行軍で202名が遭難死した事件は小説や映画にもなった。 山中には峡谷や広大な湿原や田代岱などがあり、奥入瀬とはまた違った広々とした大自然で、青森を代表する観光地でもある。
 八甲田のドライブウェイ
|  八甲田は残雪が…
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冬の八甲田山はスキー場だ。今年は例年になく春は早く暖かい日が続いたこともあってスキー場は早終いしたが、それでも5月中旬までは滑ることができた。 また酸ヶ湯、蔦湯、下湯、田代元湯など多くの温泉もあり、登山者や一般観光客で一年中賑わうところだ。 都会は初夏でも八甲田山は車内はヒーターを効かせながらアオモリトドマツの林の中、残雪の山を眺める。
●酸ヶ湯(すかゆ)
江戸時代から湯治客が多く訪れたという酸ヶ湯温泉は、標高900mのブナ林とトドマツの境界線に位置し山の湯として、今も昔と変わらない湯治の風情を残している。名物の千人風呂は体育館ほどもある総ヒバ造りで、温度の異なる5つの浴槽がある。すべてが混浴だが、午前8~9時と夜9~10時だけは女性専用になっている。 昔は7里の山道を登り雪の上を渡り歩いて入浴したそうだ。そのため、風雪や直射日光を避けて白い肌着を着て入浴したとか。
○酸ヶ湯温泉旅館
木造にガラス戸欄干のついた昔ながらの一軒宿で、ヒバ造りの浴槽とともに人気が高い。一泊2食付き9,000円から。素泊まりもある。 もう30数年ぶりに訪れたが、宿の風情そのものは変わらなかった。しかし宿泊の部屋は増設され、大きな土産物屋、食堂が隣接されていた。また周辺は大駐車場となっていた。 /日帰り入浴 500円、TEL 0177-38-6400
●弘前市
かつては津軽藩十万石の城下町として栄えたところ。県下では青森市に次ぐ都市で弘前ねぶたや桜の名所として知られ、シーズンには全国各地から大勢の人が訪れる。 青森市と並んで有名な「ねぶた祭り」は8月に行われるが、その前祭りとでもいうのか、“ミニねぶた”が5月に行われていた。
●弘前公園と弘前城資料館
築城は慶長16年(1611)で、天守閣は江戸時代に一度再建されている。また城門などを含めて重要文化財に指定されている。 天守閣には当時の鎧、刀などの武具をはじめ城内で日常使われていた品々が展示されているが、天守閣の堅固な造りの窓からは城内の池を鏡に映す岩木山の眺めを絶賛、しばし殿様気分が味わえる。
 弘前城
|  弘前城天守閣から 堀を見下ろす
|  弘前城の池と岩木山
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この城跡の一部が公園として開放されていて、有名な春の桜まつりも盛大に行われる。 また市立博物館や植物園もある。 問い合わせ/弘前市観光協会 TEL 0172-35-3131
●津軽藩ねぶた村
平成14年4月にリニューアルオープンした建物は全体が江戸時代風で、津軽に伝わる工芸品や玩具の政策体験及び特産品などを売る店などが一緒になった棟だ。  弘前ねぶた
|  弘前ねぶた。本番は8月
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ねぶた祭りを見学・体験ができる施設が中心だが津軽三味線の生演奏も聞ける。 /ねぶた村入場料 500円、TEL 0172-39-1511
●仲町伝統的建物保存地区
弘前城亀甲門前に残る藩政時代の家屋、特に武家住宅が当時のまま保存されている。 亀甲門前通りに残る「石場家住宅」はこの地方の昔の商家でワラ工品と荒物を扱っていたという。 軒先を広くとった通路は豪雪地帯特有の建築で、商家はもちろんのこと通りに面した民家も軒下を貸し深い積雪の長い冬を人々はこの回廊のようなひさしの中を往来した。 秋田・青森などの豪雪地帯では珍しくない建物でもあった。 内部の見学もできる。 /入場料 100円、TEL 0172-34-7579 |  弘前の古い商家
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 夕暮れの岩木山(東北道から)
| 弘前をあとに緑の八幡平へと足を延ばすつもりだったが、天候が思わしくなかったこと、その上、地元の人が語る東北の紅葉の美しさを思い描いて、山々を錦に染める秋にもう一度訪ねようと思う。 黒石ICから東北自動車道にのり帰路についた。 |
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